今、世の中は、公共施設も商業施設も住環境もすべてバリアフリーの方向に進んでいます。
便利、安全、快適は皆が望むことだとは思いますが、こと、幼児が育つ場として本当に望ましい環境でしょうか。
ちょっとした段差でつまづく、転んだら骨折の大けが、ペットボトルのふたを開けられない、ひねる蛇口を回せない、そんな子が増えているのです。
便利、安全、快適の生活が、子どもたちから、「ちょっとした努力、がまん、工夫」するチャンスを奪ってしまったとも言えるのではないでしょうか。
子どもの気持ちのよく分かる大人(おかあさん、おとうさん、せんせい)は、子どもがやってほしいことをすぐに察知して、先回りして手をさしのべます。
聞こえは良いのですが、そうされた子は、座ったら座ったまま、立たせたら立ったままで自分から歩こうとも走ろうともしない、何をやるのも面倒がる、そんな子どもになってしまうのです。
本園では、子どもたちが主体的にやりたいことを見つけ、それに没頭すること、集中して取り組むことを大切にします。そして子どもたちがやりたいことをするためには、自ら体を動かしたり、がまんしたり、工夫したりすることが必要な環境、つまりバリアフルな環境で、子どもたちを育てていきたいと考えています。
令和2年度から、個人持ちの道具を減らし、みんなで共有する道具を増やすことにしました。
限られた道具を使ってやりたいことをするためには、お友だちと取り合ったり譲り合ったりという、関わり合いが自然と生まれてきます。ケンカをしたり、仲直りをしたり。その経験が子どもたちの心も育てていくのです。
運動着に着替えるのではなく、濡れても汚れてもいい自由服に着替えることにしたのも同様のねらいです。崖を登ったり滑り降りたり、土の上を転げ回ったり、泥んこになってさまざまな自然と格闘する、汚れることを気にせずに思いっきりやりたいことができるような園にしていきたいと思っています。